不当労働行為救済命令出る

概要

愛知県労働委員会は、8月30日付で、学校法人河合塾に対し、河合塾ユニオン書記長・佐々木信吾氏を復職させるよう命令しました。

 

弁護士ドットコムニュース でも詳しく報道されました。

 

当組合は2010年3月、河合塾で働く労働者(講師、事務職員など)を対象に結成、団交を続けていたが、2012年3月、九州地区の組合員講師に対する雇い止めが強行されたことを機に、2012年8月30日、不当雇い止め、他団体との差別的取扱い、不誠実団交、支配介入などを不当労働行為として、愛知県労働委員会に救済を申し立てていました。


河合塾側はその後、2013年度をもって佐々木書記長を雇い止め。当組合は重大な不当労働行為として、救済の追加申立をしました。


9月20日(火)に組合に送付された救済命令(発令は8月30日付)は、佐々木書記長の雇い止めに関し、当組合の主張をほぼ全面的に認め、佐々木書記長の復職とバックペイ、謝罪文の交付などを命じました。しかし、その他の救済申立については却下しました。


佐々木書記長の復職等を命じたことは大きな成果であり、評価できます。しかし、その他の救済申立について却下したことは不当であり、特に九州地区の組合員講師に対する、パワハラ的面談の後の雇い止めを不当労働行為と認めなかったことは容認できません。佐々木書記長の早期の復職実現を求めるとともに、不当に却下にされた項目については、あらゆる手段を検討して解決を目指し闘っていきます。

 

なお、河合塾側のコメントについては、こちら からダウンロードできます。

組合声明

河合塾ユニオンが、救済申立を行ったのは、以下の不当労働行為について。


1.組合書記長・佐々木信吾に対する不当な雇い止め
2.A組合員(九州)に対する不当な雇い止め
3.組合の広報活動に関して、他団体との不平等な取り扱いをしていること
4.団交に担当理事が一度も出席していない、団交議題を拒否するなどの不誠実団交
5.組合結成時より、佐々木書記長に対して継続的に行われた、組合員であるが故の「いじめ」を黙認するなど支配介入を行ったこと

 

命令の詳細


1.愛労委は、佐々木書記長の不当な雇い止めについて、学校法人河合塾の不当労働行為を認定し
・佐々木書記長を速やかに就労させること
・この間の報酬を支払うこと
・不当労働行為を繰り返さない旨の文書を河合塾ユニオンへ交付すること
を命令した。


佐々木書記長に対して河合塾は、2013年8月、佐々木書記長が厚労省発行のリーフレットを数人の河合塾職員に手渡したこと、それについて「非を認めていないこと」を殊更大きく取り上げ、不当な雇い止め(次期出講依頼停止)を強行していた。これに対し、ほぼ全面救済を命じたことは、当然のこととはいえ、評価できる。


また、労働組合運動への貢献として
・河合塾側が「労働者でない」と主張した、委託契約講師の労働者性を認めたこと
・出向先の労働条件について出向元との団交で扱うことを認めたこと
などが評価できる。

 

しかしながら、当初の申立については、事実認定に重大な問題があり、この点では不当な命令となっている。不当性の具体例を下に挙げる。


2.A組合員の不当な雇い止めについて


・河合塾はA組合員に関する塾生アンケート結果を根拠にして、雇い止めを強行したが、他の講師の数字と比較して、到底雇い止めされるような数字ではない
・そもそも雇い止め基準が公開されず極めて曖昧である。
・アンケート結果は年度やクラス構成によって異なる数字が出るにもかかわらず、担当するクラスも生徒も未定な段階で、けして低くない数値(満足度50%、不満足度10%)を示して不達なら雇い止めるという、前例のない「覚え書」の提出を条件としたことの不当性を認めていない。
・河合塾が一方的に期限を決めて、団体交渉を打ち切って「最後通告」をし、河合塾ユニオンが都労委に話し合いによる解決を求めて斡旋申請した事実を全く無視して、「期限内に回答しなかった」と不当な断定をした。


3.組合の広報活動に関して、他団体との不平等な取り扱いをしていること


・かつて河合塾内では講師によって自由にビラが配布されており、河合塾ユニオンが結成されて以来、急速に規制が行われるようになったことを、大量の証拠ビラによって示したが、その事実にいっさい触れていない。
・団交時に組合が掲示の「許可申請をしたら認めるか」と述べたのに対し、河合塾側は「スペースがない」と答えている。にもかかわらず、「講師会は許可を得て掲示している、組合は具体的に許可申請をしていないから掲示を拒否したとは言えない」などと差別的扱いを正当化している。


4.団交に担当理事が一度も出席していない、団交議題を拒否するなどの不誠実団交


・私学共済に関し、文書で河合塾側が「団交議題としない」と述べたことをまったく無視している
・私学共済の加入基準は河合塾で作成しているのに、重要な労働条件である共済加入基準について、具体的な話し合いをまったく行っていないこと。
・団交で単に拒否回答を繰り返しているだけなのに「話し合っている」と認定している。
・「労務屋」について、会社名も身分も資格も名乗らない団交参加者を容認している。
・担当理事がこれまで団交に一度も出席していない、という事実を無視している。
・組合が団交議題に関わる担当者の出席を要求しその日程調整をしたにもかかわらず、これを拒否し、「可能な範囲で説明」し、「具体的な内容について、すぐに回答」できなくても不当ではない、などとしているが(P.78)、命令書でも引用しているように、河合塾は「説明する立場にない」などと述べただけで(P.47)、「具体的な内容」は何一つ答えず、交渉にならなかった。


5.組合結成時より、佐々木書記長に対して継続的に行われた、組合員であるが故の「いじめ」を黙認するなど支配介入を行ったこと


・佐々木書記長に対し、組合員であるが故の「いじめ」が行われている現場に、河合塾の責任者が同席していたにも関わらず制止しなかったことを一切に言及していない
・一貫して行われているのは、佐々木氏が組合書記長であるが故の「いじめ」であり、組合書記長であるからこそそれが続いている、という行為の継続性を認定していない。

 

河合塾ユニオンとしては今後


○ 佐々木書記長については、「速やかに就労させること」をはじめとして、ただちに命令に従った対応をおこなうことを求める。
○ 不当に棄却された問題に関しては、再審査申立、改めての救済申立、団交での交渉など、あらゆる手段を検討し、解決を求めて活動していく。

河合塾ユニオン弁護団コメント

業界最大手の河合塾は、講師との契約を講師職講師契約と委託講師契約と2種類に分けて後者の契約の場合は労働契約ではないなどと言い張ってきたが、今度の愛労委の命令は明確にそれらの講師に労働者性を認め、不当労働行為による救済の道を改めて示したもので昨今の最高裁、各労働委員会の判断に沿うものであるが、河合塾の不当・違法が弾劾されたもので、学習塾の「業務委託講師」の労働者性を認めたのは、知る限り全国でも初めてである。


また、河合塾の講師の河合塾グループへの出講先の労働条件に関する議題は河合塾も団交に応諾する義務があると認めたのは、河合塾ユニオンが団体交渉を求めてきた正当性を裏付けるものである。


しかし、他方で、愛労委は、河合塾が一方的に主張するアンケート結果等による前田講師に対する雇い止めの強行、ユニオンの広報活動に対する規制や河合塾の不誠実団交、講師団体を使った組合活動への支配介入などについて、事実を無視した不当な判断をし、また、日本の労働運動の到達点すら考慮せず、労働組合の活動に対する著しい制限を放置するもので、全く不当であり、今後正されなければならない。

 

弁護団(弁護士竹内平、弁護士石塚徹)

河合塾理事長への「要望はがき」

今回の命令は、裁判や中央労働委員会による命令で覆されないかぎり有効ではありますが、裁判所による判決と異なり、強制力がありません。実際、労働委員会の命令を無視し続けるブラック企業が後を絶ちません。

 

そこで、読者の方にお願いがあります。

 

河合塾理事長に対して、今回の命令を履行するよう、「要望はがき」を書いて郵送していただけないでしょうか。はがきは以下からダウンロードできます。

 

「要望はがき」の表面

「要望ばかき」の裏面

 

何卒、ご協力をお願いいたします。