佐々木書記長雇止め事件・東京地裁判決出る~組合側全面勝訴

河合塾では2013年、「労働契約法が改正されたので皆さんに辞めてもらわなければならなくなりました」として、長年勤務した有期職員180名(大半は女性)を年度内で雇止めにしました。当事者らから相談を受けた河合塾ユニオンの佐々木信吾書記長は厚労省作成の無期転換に関するリーフレットを休憩時間に対象者数名に手渡したところ、河合塾は佐々木書記長を施設管理権侵害という理由で契約非締結にしました。

 

愛知県労働委員会(2016年)、中央労働委員会(2021年)ともに河合塾側による不当労働行為を認定し、謝罪文の掲示、佐々木書記長の復職、バックペイを命じたところ、河合塾側はこれを不服として行政取消訴訟を東京地裁に提起。その判決が2023年9月26日に出され、河合塾側の訴えはすべてしりぞけられ、中労委が発した緊急命令も認容されました。佐々木書記長は来春10年ぶりに復職できる見込みです。

 

中央労働委員会による命令までの詳しい経緯はこちらをご参照ください。

【 弁護士によるコメント 】

 

本判決の争点は、大きく分けると、①佐々木書記(業務委託契約)の労働組合法上の労働者性、②河合塾が佐々木書記長との契約を非締結としたことが各不当労働行為に該当するか、③中労委の救済内容が適法か、の3つとなります。

 

②については不当労働行為該当性の事例判断を積み重ねるものとして意義があり、①については労働組合法上の労働者性の事例判断を積み重ねるとともに塾や予備校講師の働き方に一石を投じるものとして意義があるものです。

 

そして、③が本判決の最も大きな特徴です。佐々木書記長が現職復帰するまでの間のバックペイの支払いにつき、通常の民事事件であれば復職までに別で働いて得た賃金などの中間収入を控除すべきとの判断が出るところ、本判決は河合塾の不当労働行為が組合や佐々木書記長に与えた影響が極めて重いものであったことを捉えて、中間収入を控除しないとした中労委の判断が適法なものであると結論付けました。これは第二鳩タクシー事件最高裁判決が示した枠組みの中での事例判断ではありますが、先例が乏しい分野であり、かつ、組合壊滅事例ではない本件でも適法としたことは極めて大きな意義があるものと考えています。

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コメント: 1
  • #1

    吉田正 (月曜日, 05 2月 2024 11:17)

    お手紙をいただきました。ありがとうございます。職場復帰おめでとうございます。長いたたかい、大変だったと思います。身体に気をつけて本来のお仕事に、がんばって下さい。